総合ディスクロージャー&IR研究所

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調査研究報告Research

研究員コラム

片桐研究室長

研究員コラム「グローバルにおける ESG 情報開示の標準化と日本企業の個性」を発行しました

ネットゼロをめぐる国内外の動き

 最近ふと思い出したことがある。筆者は韓国が好きだ。正確に言えば韓国料理が好きなのだが、20年程前から年に1度は必ずソウルに訪れていた。韓国は好きだが、一方で訪韓する度に日本の素晴らしさを痛感していたのも事実だ。初訪韓時、日本はやっぱり進んでいる国だな、漠然とそんな感想を抱いていた。それから訪韓する度に徐々にその印象が変わっていった。気が付けば、今では韓国で流行っていたものが暫くすると日本で流行るようになっている。思い返せばレインボーフードと呼ばれる虹色をした食べ物も、初めて見たのはソウルだった。日本は先進的、そんな感覚を持っていたあの頃の自分を振り返り、とても恥ずかしく思う。

 なぜそんな話を思い出したのかというと、その状況が現在の気候変動への日本の対応状況と重なったからだ。日本の環境対応は先進的・・・とまではいかないが大きく遅れをとっているとは感じていなかった。10月26日、菅首相が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロにする」という発表をした。このコミットは2050年に二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量と、森林などで吸収される量を差し引きでゼロにする目標である。日本政府はこれまで「脱炭素社会を今世紀後半の早期に実現」「2050年に80%削減」等を公表していたが、明確な年限と共にネットゼロにまで踏み込んでコミットしたことで、世界からも大きな評価を得ていることは事実だ。

 しかし、既にEUは2019年に同様の目標を立てている。EUでは気候変動対策を経済復興の焦点にしており、欧州グリーンディールを強力に推進している。これは2050年に気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)実現を目指し、全ての政策に関して気候・環境課題に取り組むことを表明したものだ。新型コロナウイルスによるパンデミック発生直後においては加盟国や経済界の間で気候変動対策に温度差が生じていたものの、施策の一部を延期しつつ引き続き推進していく状況にある。特に欧州グリーンディールの核と言われている欧州気候法(案)には法的拘束力のある目標が含まれており、各産業に与える影響は大きい。現時点では2030年の排出削減目標の設定については本年・・・・

    

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