総合ディスクロージャー&IR研究所

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調査研究報告Research

研究員コラム

小谷主席研究員

研究員コラム「SDGsやESGという言葉が使われなくなる時代」を発行しました

フォーマット化の功罪

 

 国内外の資本市場に長年関わっていると、「日本では当たり前のことが案外、外国人の目には奇異に映る」といった経験をする。その一つが決算短信だ。

 2017年2月10日、東京証券取引所は新しい決算短信・四半期決算短信の作成要領を公表し、サマリー情報の記載内容を義務から要請に改めた。業績予想の開示についても、参考様式を削除する等の東証規則の変更を行い、2017年3月31日以後に終了する通期・四半期の決算短信から適用を開始した。しかし、今もほとんどの企業で参考様式が踏襲されており、日本の決算短信はグローバルに見ると法定開示のquarterly reportに近い。よって、英語で「the earnings release (kessan tanshin) for the second quarter of 20XX released on (date), 20XX」のように「earnings release」を「日本では決算短信って言うんですよ」と敢えて法定開示の四半報(quarterly report)と区別して、短信には速報性があることを伝えている。或いは、単純にTANSHINと英語でも使われるケースが多い。

 

 海外企業のearnings releaseは売上××、利益××で終わってしまうケースが多く、具体的な内容は直後に実施されるCEOやCFOによる電話会議や後日セットされる説明会によるアナリストからの質疑応答で対応される。今でこそ、短信発表直後にアナリストやファンドマネージャー向けに電話会議を行う日本企業も増加してきたが、昔は東証の兜クラブで記者向けに数字をさらうような記者会見が一般的であった。伝える企業側も、聞く新聞記者も企業分析の専門家でないので双方に「伝える材料」「聞く材料」が必要であった。

 

 フォーマットを揃えて、「説明する方」も、「記事にする方」も比較できることが重要であったし、会社が行う業績予想も必要であった。決算短信は、速報性のある数値が他社比較できるようコンパクトに整理された資料である。そのため、東証規則が改正され、サマリー情報が自由化されても尚、重宝されているし、グローバルに見ても速報性と分析のしやすさから有用性があり、現在もフォーマットを利用している企業がほとんどである。

    

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